利根川・渡良瀬川合流域の水場景観
とねがわ・わたらせがわごうりゅういきのみずばけいかん
概要
群馬県の最東端に位置する板倉町には、利根川と渡良瀬川との合流点に形成された低湿地「水(みず)場(ば)」が展開している。そのため当地は古くから洪水多発地帯であり、豊かな土壌・生態系が育まれる一方、生活を営むために様々な工夫が行われてきた。当地における人々の居住は縄文期から確認されるが、広大に展開する沖積低地における集落形成や開墾は、中世末期から近世にかけて実施された築堤や河川の瀬替えによって実現した。近代には大規模な治水事業が行われ、現在に通じる水利システムが完成された。こうした治水事業によって開墾された低地では、主に水田耕作が行われている。水田の中には、河川や沼に面した湿地に溝状の堀を掘り、その掘削土を客土(揚げ土)し掘り上げ田を造成した、川(かわ)田(た)と呼ばれる農地も営まれている。また、自然堤防上を中心に形成されている居住地では、屋敷地の一画に土盛りをし、その上に水(み)塚(つか)と呼ばれる避難用建物が築造されている。屋敷地の北西にはエノキ・ムクノキなど自然堤防の環境に適応した郷土種や、水防にも有効なタケ類が植栽されており、防風屋敷林として機能している。
このように、利根川・渡良瀬川合流域に形成された水場景観は、大河川の合流域で形成された低地における、水と共生する生活・生業上の様々な工夫によって育まれた、価値の高い文化的景観である。