楊柳観音

日本画 

村上華岳 (1888-1939)
ムラカミ、カガク
彩色・紙本・軸・1幅
111.0×31.5
左下に落款、印章

53
楊柳観音   一幅

村上華岳

紙本署色
制作年不明
縦一一一・〇 横三一・五
東京国立近代美術館
  
衆病の消除を本誓とする楊柳観音を華岳に描かせたのは宿痾の喘息だけではない。観音の眼差す先には、彼が好んで描いた柳の枝がある。しなやかなれど強靭な柳の枝。そうした、相反するものの調和への興味は、「裸婦図」が霊的かつ官能的であったように、彼の制作の根底にある。ならば、柳の枝へと向かうその眼差しは、華岳のそれでもあると言えないだろうか。「神は死んだ」と宣言された近代に描かれるべき仏画とは、もはや信仰の対象ではなく、信仰する精神の表われとしてのみ可能なのであり、そこに近代絵画の可能性もまたあるのだろう。大阪に生まれ京都で学んだ村上華岳(一八八八〜一九三九)は、円山四条派の画風を身につけつつも、浮世絵や西洋の絵画を基礎づける精神にも目を向けていた。日本画刷新と純粋な芸術創造の場を求めた国画創作協会の結成に加わるも十年で解散。神戸市花隈への転居も相まって、画壇との接触を避けてゆく彼の制作は、まさに「密室の祈り」となっていった。(保坂健二朗)


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