継色紙「われみても」
つぎしきし われみても
概要
平安時代中期の書写になる「継色紙」は、当初は粘葉装の枡形の冊子本であったが、後世その優美な筆跡が愛好され、分割されて古筆切となった。当初の冊子の3頁分を貼り継いで掛幅装とした本作品は、『古今和歌集』巻第17に所収される読み人知らずの1首「我みても久しくなりぬ住江の 岸の姫松いく夜経ぬらん」を、濃い藍と薄い縹の料紙2頁に、連綿を積極的に用いて揮毫する。その書きぶりである「散らし書き」は、行頭を揃えない各行が紙上に揺らいで余白を意味あるものに変え、高い芸術性が見て取れる。また、本作品は、江戸時代前期、後水尾院の上覧に供されて紀貫之筆とのお墨付きを得、京都大工頭・中井家に伝来したことが付属資料から判明する。近世における作品の伝来の姿と古筆尊重の気風が如実に確認でき、歴史的価値も高い。国立博物館として収蔵するに相応しい平安古筆の逸品である。