奈良県ホケノ山古墳出土品
ならけんほけのやまこふんしゅつどひん
概要
ホケノ山古墳は、奈良盆地の東縁に所在する出現期の前方後円墳で、全長約80m、古墳時代初頭(3世紀中頃)の築造と推定される。後円部の墳頂部中央に築かれた、石槨と木槨の二重構造からなる「石囲い木槨」
から出土した副葬品一括で、画文帯同向式神獣鏡一面や破砕鏡のほか、素環頭大刀をはじめとする刀剣類や各70点以上の銅鏃・鉄鏃、鉄製農工具類、装飾性に富んだ二重口縁壺、小形丸底土器からなる。特に、銅鏡は意図的に破砕した破鏡と完形での副葬の二種がみられ、この時期の鏡の副葬を示すものとしても注目される。また、鏃の目立つ副葬品組成をとる点も特徴的である。木槨上部を取り囲むように置かれた壺形土器の在り方は、のちに前方後円墳墳頂主体部上で盛行する、墳頂祭祀への繋がりを想起させる。
これらは、弥生時代から古墳時代への過渡期において、古墳文化の成立過程や開始年代を示す資料であり、古墳時代前期に盛行する副葬品組成や壺形土器を主体とした埋葬儀礼の実態をよく表している。畿内中枢部に位置する古墳の質・量ともに優れた副葬品であるとともに、古墳時代の開始を語る上で欠かせない一括である。