二行書「順境如春云々」
にぎょうしょ「じゅんきょうははるのごとしうんぬん」
概要
江戸時代後期を代表する儒学者である佐藤一斎(1772-1859)による二行書。本品は、自身の『言志後録』所収、第86条の格言を揮毫したもの。『言志後録』は、いわゆる「言志四録」(『言志録』・『言志後録』・『言志晩録』・『言志耋録』)の総称)のうちの一つで、文政11年(1828)から天保8年(1837)頃に執筆された。刊行は少し遅れて弘化3年(1846)である。つまり本品の揮毫は、執筆が開始された文政11年以降となる。
一斎の書の多くは、墨が途切れるところまで書き進める点と、特徴的な払いのかすれが見られるが、本品は総じて潤筆である。本品に捺される印の種類とその郭線の欠け方、あるいは配置は、一斎が嘉永4年(1851)に80歳の記念に書いた「八十歳誕辰七言律詩」(東京国立博物館所蔵、B-3134)と同一である。
<松浦晃佑執筆, 2024>