箱迫
ハコセコ
概要
こうした美麗重厚な刺繍文様の箱迫は、大奥や大名の奥向き女中の所用で、鏡・懐紙・箸・櫛など女性の身の廻りの用意を納めて懐中するものである。主としてラシャやビロード、ゴロフクレンなど当時舶来の珍しい裂類を用いている。刺繍は撚糸(よりいと)をさまざまに駆使し、しかも肉入(にくい)り繍(ぬ)いで、小さな空間ながらその意匠の気分はきわめて大きく、見る者を圧倒するようである。文様の主題は五節句にちなんだり、能楽、中国の故事など吉祥の意味をもつものや、季感ゆたかな秋草文様などがある。