冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏
ふがくさんじゅうろっけい かながわおきなみうら
概要
これは、江戸時代の後半に、浮世絵師の葛飾北斎が描いた木版画で、富士山をテーマとした46枚シリーズの一枚です。日本の絵画の中でも、最も世界的に知られた一枚ではないでしょうか。タイトルは「冨嶽三十六景」なのに46枚あるのは、人気が高く当初の予定から10枚増えたためです。葛飾北斎は、アメリカの雑誌『ライフ』で「この1000年で最も重要な功績を残した世界の100人」にも選ばれています。
嵐を予感させる暗い空をバックに、大きなうねりをあげる波と、その向こうから顔を出す富士山。房総から江戸に急ぎの荷物を運ぶ早船でしょうか、たくさんの漕ぎ手が乗った船が波にまかれています。本当にこんな大波がきたら、人びとの乗る船はひとたまりもありません。現実的な風景ではなく、ちょっと大げさに、ドラマチックに表現したのでしょう。大きく動きのある波と遠く安定した三角形の富士山の対比が、遠近感を生み出しています。
この作品をはじめ、「冨嶽三十六景」シリーズの最初の頃には、「ベルリン・ブルー」と呼ばれた青い顔料が多く使われています。この時代にヨーロッパから日本に入ってきたもので、北斎の新しいものへの関心の高さが見てとれます。