八木巻神楽 附 安政六年銘 獅子頭権現幕
獅子頭2頭
明治三十三年銘神楽衣装(千早)
やきまきかぐら つけたり ししがしらごんげんまく
ししがしらにとう
めいじさんじゅうさんねんめいかぐらいしょう(ちはや)
概要
八木巻神楽は花巻市大迫町外川目に鎮座する八雲神社の奉納神楽で、近世期以降の大迫外川目地区における神楽の変遷を顕著に示すものとして、岩手県指定文化財に指定されている(令和2年4月7日指定)。
今回追加指定する物件は、「安政六年銘 獅子頭権現幕」(1枚)、「獅子頭」(2頭)、「明治三十三年銘 神楽衣装(千早)」(1着)の神楽資料4点である。
「安政六年銘 獅子頭権現幕」は、文字の流れから「白山(はくさん)妙(みょう)理(り)大権現(だいごんげん)」と思われる銘が残っているが、意図的に文字消しを試みた痕跡があり、かつて八木巻を含む外川目地域に白山信仰が浸透していたことを伺わせると同時に、その後、明治時代初期の神仏分離令によって、「大権現」の使用ができなくなった歴史的な経過を示すものである。
また、獅子頭権現幕は、傷むと米などを入れる袋に作り替えてしまうため、古いものを残している事例は殆どなく、まして江戸時代銘の入ったものは希少である。
「獅子頭」については、大小2つがあり、年記はないものの、代々別当家に伝わるもので、形状などから古い時代のものと推測される。
大きいものは、荒削りで素朴な作りであり、銘もないことから地域住民もしくは民間宗教者により作成されたことが推察される。また、獅子頭の内部には握りが付き、わずかではあるが歯を合わせた痕跡があることから、神社に奉安されるだけでなく、祈祷あるいは舞にも使用されていたことがわかる。一方で小さいものは、内部に握りが無く、祈祷のみに使用されたことが伺える。
「明治三十三年銘 神楽衣装(千早)」は、背面に「明治三十三年 奉納山神社 九月十二日 八木巻連中」と墨字で記されているが、このような銘のある神楽衣装が保存されていることは、周辺の神楽団体と比較しても貴重なものである。神楽衣装の千早は、神楽舞の中でも重要な「山の神舞」などの演目で着用される。この衣装から、八木巻神楽は明治時代には、祈祷の「権現舞」以外に神舞などの幕神楽の演目を行っていたことがわかる。