雄鶏を射る王子(ヴィバーサ・ラーギニー)
おんどりをいるおうじ
概要
インドでは、インド神話や、シヴァ神、ヴィシュヌ神などのヒンドゥー教の神々、王の肖像や歴史的なエピソード、男女の恋愛などさまざまなテーマを緻密なタッチと鮮やかな色彩で描いた、細密画とよばれる絵画のジャンルが発達しました。多民族国家であるインドでは、細密画の表現も地域によってさまざまで、それがまた魅力であるともいえます。
王子と女性が天蓋(てんがい)をしつらえたベッドの上で一夜を明かしています。ベッドの向こう側には雄鶏(おんどり)が夜明けを待っています。王子はおもむろに矢をつがえると、雄鶏を狙います。雄鶏さえ鳴かなければ朝は来ない、そうすれば二人はいつまでもいっしょにいられるという男女の想いが描かれています。
これはインドの伝統的な歌曲(かきょく)を絵画として表現したもので、楽曲絵、すなわちラーガマーラといいます。ラーガマーラはインド細密画における独自のジャンルを形成しました。