古今和歌集断簡 通切「うくひすの」
こきんわかしゅうだんかん とおしぎれ うぐいすの
概要
裏面に布目の跡が残る料紙に、『古今和歌集』巻第1の和歌2首を書写した断簡。もとは粘葉装の上下2冊の冊子本。上巻は昭和27年(1952)までは完本として伝来したが、その後分割された。装飾のある紙の表を使用した断簡を「筋切」、紙の裏面を使用した断簡を、篩に似た荒い布目の跡があることから「通切」と呼ぶ。
本品には流麗で温和な書風が展開される。伝承筆者を藤原佐理とするが、佐理の筆跡とは異なる。書風から藤原定実筆と推定される。筋切が漢字の使用を控えているのに対し、通切は漢字の使用が見られる。見開きごとに、また和歌ごとに変化を見せようとした筆者の美意識が見いだせる。