庫
くら
概要
万鉄五郎は、1914年9月に家族とともに故郷の岩手県・土沢に帰り、孤独な制作に没頭する生活を送ります。彼は土沢の風景に接しながら、それを写実的に表現するのではなく、自然の奥底にひそむ生命力や形象を抽象化し、いったん自らの造形言語におきなおして画面を組み立てていったのです。この作品はそうした土沢での研究が実を結んだ作品の一つです。フォーヴィスム風の荒々しいタッチはまだ見られますが、強烈な色彩は影をひそめ、褐色を中心とした重厚な存在感がまず目を奪います。立体を二次元の平面に再構築して定着させるというキュビスムの方法を用いながら、そこに彼独特のうるおいのある筆づかいが生彩を放っています。