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旧岩船氏庭園(香雪園)

きゅういわふねしていえん(こうせつえん)

概要

旧岩船氏庭園(香雪園)

きゅういわふねしていえん(こうせつえん)

名勝 / 北海道 / 北海道

北海道

函館市見晴町

指定年月日:20010813
管理団体名:

史跡名勝天然記念物

 香雪園は,明治31年(28年ともいう)函館市在住の呉服商岩船峯次郎が,自ら庭園作りを行ったもので,明治40年には既に地域における景勝地となっていた。大正になって知恩院貫主が来函訪園して「香雪園」と命名し,更に大正9年に京都から庭師を招き,3年かけて再整備したものである。現在保存されている敷地は13haに及び,昭和30年岩船氏から無償貸与を受けた函館市が昭和34年から公有化し,都市公園として管理している。
 香雪園は,北辺中央部の高台に書院風の園亭を設け,その東から南にかけて鈎の手に池を掘り,地域に産する石を用いて護岸とし,灯籠を配して純和風庭園区を造る。西北香雪園入口から園亭まで馬橇で到る道筋を始め園内にはアカマツを中心とした本州産の樹木を植栽して風景を造成し,園亭近くに竹押さえ杉皮葺の軽快な中庭門を設ける。園亭・中庭門を出て南,スギを植栽した中の園路を行くと,左手に深い渓流が造成され,渓越に四阿を望む。渓流部は橋上流部で水面を形成し,現在は層塔型石燈籠が点景として据えられる。アカマツ植栽により園路は狭められて藤棚を潜り,明治の煉瓦造温室に至る。温室南に整形沈床式の西洋風造園区を設ける。温室2階の部屋からは,北に渓流・園亭庭園区を望む。温室東に水源・石組み流れが形成されて渓流部に注ぎ,橋も架けられていた。温室から東に進むと四阿及び芝生広場に至る。芝生広場は近代庭園の特徴的庭園空間で,明治時代から園遊会など多いに利用された。植栽は,主として本州から運ばれたアカマツ,スギ,ケヤキ,イロハモミジ,シダレヤナギ,マメザクラ等の高木のほか,多くの花木類も植えられ,全園に本州の植栽を施して本州への憧憬を示している。
 本庭園は,各庭園区に池・滝組と層塔型石燈籠・石組流れと立石など見応えのあるそれぞれの主景を構成しつつ,いくつもの庭園区が空間を共有しあって景観を構成しており,その地割構成も見事である。このように、明治開拓期の北海道を象徴するような広大な敷地に造成された和風・洋風織り交ぜた庭園で,明治期の特徴と北海道らしさを兼ね備えて稀有の風景式庭園を形成しており貴重である。よって名勝に指定しその保護を図ろうとするものである。

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