紙本墨画布袋図
概要
賛を書いている簡翁居敬【かんのうきよけい】は痴絶道冲【ちぜつどうちゆう】の法嗣【はつす】で、浄慈寺【じんずじ】に住し、のち天童山四十二世となった当代著名の禅僧である。生卒年は不明であるが、南宋末の宝祐・咸淳年間(一二五三~一二七四)に活躍したと考えられ、本図もおそらくそれを隔たらぬ時期に描かれたものとみられる描写は簡略で筆法も草々としているが、面貌は鋭く画面一杯に表わされた布袋の巨躯と相まって力強い表現となっており、当代禅林に行われた水墨道釈画の遺例中の力作である。
なお本図は足利将軍家の東山御物のうち、腹撫布袋【はらさすりほてい】の名で親しまれた名品として知られている。