絹本墨画白衣観音図
けんぽんぼくがびゃくえかんのんず
概要
わが国における初期水墨画の中で道釈画の占める位置は大きく、白衣観音図の遺例は少なくない。その中にあって本図には図上に蘭溪道隆の法嗣で建長・建仁・南禅を歴任した約翁徳倹の著賛がみられ、彼の歿した元応二年(一三二〇)以前の制作になることが明らかであり、類品中、最も先行する作例としてその価値は高い。構図は、水中に突出した岩上に趺坐する観音を中心として、左端に瀑布、下辺左隅に合掌礼拝する善財童子、背後に竹林を配するというように、多くの素材を集めた観賞性の高いもので、かつ、描写も大変優れている。