天球儀
てんきゅうぎ
概要
天球儀
てんきゅうぎ
歴史資料/書跡・典籍/古文書 / 江戸 / 関東 / 茨城県
茨城県
江戸/1697
1基
茨城県つくば市天久保4-1-1
重文指定年月日:19900629
国宝指定年月日:
登録年月日:
独立行政法人国立科学博物館
国宝・重要文化財(美術品)
両球儀は江戸時代の天文暦学者渋川春海(一六三七―一七一五)が作製し、高弟で神道学者・儒学者の谷秦山【たにじんざん】(一六六三―一七一八)の家に伝来した。
天球儀は紙張子製の天球を木製の台座で支える。天球面に赤道、黄道、常現圏(上規)、常陰圏(下規)、二十八宿の距星を通る赤経線(距線)、星、星座、銀河を図示し、星・星座名や二十四節気名を記す。
星は赤・黄・黒・青の四色の小円点で表示し、星座は薄い墨線を引き、星座名を墨書しており合計三六一座一七七三星が記入されている。四色の星のうち赤・黄・黒が中国の甘徳【かんとく】・石申【せきしん】・巫咸【ふかん】三家の設けた星座で、春海が創始し、『天文瓊統【てんもんけいとう】』で発表した星座六一座三〇八星は青で加えている。
南極付近の常陰圏には元禄十年(一六九七)に春海が図を書いたことが記されており、本天球儀は春海の独自に観測・研究した成果を反映したものとして貴重である。
地球儀は紙張子製の球を木製の台座で支える。球面には金色で経線・緯線を引き、赤道は赤と黒で塗り分けた縞【しま】の線である。海は水色で、島や大陸等の陸地の輪郭や領土界は薄い赤線で描き、その中を種々の色で区分する。
大陸名はヨーロッパ・アジア・リビア(アフリカ)・南北アメリカ大陸の他、オーストラリア発見以前に南極を含む未知の大陸として考えられていた「墨瓦蝋泥加」(メガラニカ)が描かれている。
この他、利瑪竇【りまとう】(マテオ・リッチ)の「坤輿万国全図【こんよばんこくぜんず】」から抜粋した多くの地名と地理学的、地誌的記述がある。
別に伝わる旧台座の円形板に元禄八年の製作を示す刻銘があり、本地球儀は日本製地球儀の初期の段階のものと考えられる。
以上の天球儀と地球儀は製作時期を明らかにし、春海の学問研究の跡を伝え、揃いで伝来したものとして、わが国天文学・地理学史研究等の上で貴重である。