染付龍濤文提重〈木米/〉
そめつけりゅうとうもんさげじゅう〈もくべい〉
概要
四方隅切【すみき】りの重箱、およびそれをのせる把手付きの枠台からなる提重である。その文様は重箱各面に波濤中に勇躍する龍図、隅切り面には飾り房を、把手には紗綾形【さやがた】文、枠台には雷文繋文を染付で表している。また把手の付根部には波濤と双魚文を透かしている。
なお重箱下層の底裏に「古器観製」の刻銘があり、また共箱の蓋表には、「青花提梁層々盂龍戯海濤圖 聾米造」の自筆墨書および「專埴之工」「〓雉之職」の朱文方印が捺されており、青木木米(一七六七-一八三三)が耳を患い聾米と称した五〇歳半ば以後の作と知られる。
木米は画人としても名が高いが、絵は余技であり、自ら識字陶工と称していたごとく、文雅の士の興が高じて作陶家として立った人であった。
その作陶は、文人趣味の影響の下に、多く煎茶道具に妙技をふるっており、本品はその中にあっては数少ない木米の大作の一つである。
提重は中国文化に傾倒していた木米らしく、中国・明代の万暦官窯風の意匠・技法にならったもので、重厚な作行きを示す代表作として声価が高い。