瀟湘夜雨図
しょうしょうやうず
概要
瀟湘八景の中の「瀟湘夜雨」を描き、もと伊勢神宮の御師の家の床貼付八景図中の一図であったことが知られる。款印ともに欠くが、蔵丘筆「山水図」(東京国立博物館蔵)や、「岳翁」印をもち、了庵桂悟らの題詩をともなう「山水図」(正木美術館蔵)と、描法がほとんど一致し、同一筆者岳翁蔵丘の手になることは疑いない。筆者岳翁は、東福寺の了庵桂悟と関係深い、同じ伊勢出身の画僧とみられるが、馬遠画に倣う師周文に対し、夏珪画をもとに景相互の繋がりが自然となり、墨色も潤沢さを増して、画賛をともなわない絵画としての独立性をより明らかにしている。雪舟とほぼ同時期の15世紀前半、周文様式の絵画にあらたな方向を与えた画家として、その名が記憶されるべきである。
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公益財団法人 根津美術館