芦雁図
ろがんず
概要
渺茫とした汀州の、足の生える辺りに群れ集まる雁を描いた図である。いわゆる牧谿画様の落雁図に倣うもので、墨暈をきかせた柔潤な筆致で雁、芦、汀、湖水などをあらわしており、墨の階調によって水面の明るい照り返しを感じさせるのがひときわ印象的である。
本図の筆者長吉は、『古画備考』に元信に学ぶと記されるが、果たして元信の弟子であったかどうかは詳らかではない。本図と同様のいわゆる行体の「栗鼠図」(ボストン美術館蔵)や、別に楷体の「山水図」(ベルリン美術館蔵)、「瀟湘八景図」(藤田美術館蔵)などがあり、このうち特に楷体の山水図にはやや硬質な独特に筆癖や形態感がみられ、それが小田原狩野派の描法に近いことが指摘される。16世紀に活躍した比較的保守性の強い画家と想定される。図右下に「長吉」の朱文壺印がある。
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