秋野蒔絵手箱
あきのまきえてばこ
概要
手箱は元々座右に置かれ、化粧道具や筆記具など細々とした身近な道具を収める多目的な用途に用いられたと考えられている。隅を丸くした長方形、合口造(あいくちづく)りの箱で、蓋の甲盛(こうも)りと、身の胴張(どうは)りから、全体にふっくらとした印象のある手箱である。蓋表と箱側面全体に、研出(とぎだし)蒔絵と高(たか)蒔絵で、生い茂る薄や萩、菊、藤袴(ふじばかま)、桔梗(ききょう)、鹿や兎など秋の野の様子が勢いよくあらわされている。草叢には思いがけず蟋蟀(こおろぎ)や蟷螂(かまきり)などの小さな秋の虫が配され、金属の鋲(びょう)であらわされた草花の露とあいまって、秋の野の生命力にあふれた空気が器面全体に横溢している。
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公益財団法人 根津美術館