文化遺産オンライン

ミルン水平振子地震計〈/英国製〉 附 地震記録四十一巻

みるんすいへいふりこじしんけい〈/えいこくせい〉 つけたり じしんきろくよんじゅういちかん

概要

ミルン水平振子地震計〈/英国製〉 附 地震記録四十一巻

みるんすいへいふりこじしんけい〈/えいこくせい〉 つけたり じしんきろくよんじゅういちかん

歴史資料/書跡・典籍/古文書 / 関東 / 東京都

東京都

欧米 19世紀

1台

台東区上野公園7-20

重文指定年月日:20000627
国宝指定年月日:
登録年月日:

独立行政法人国立科学博物館

国宝・重要文化財(美術品)

 この地震計は、日本地震学の創始者である英国人ジョン・ミルン(John Milne、1850~1913)の考案に基づいて英国で製作されたもので、明治時代後期に地震観測に用いられた。
 ミルンは明治9年(1876)に工部大学校の教師として政府に招かれ、鉱山学と地質学の指導に当たった。日本の地震や火山活動に関心を深め、明治13年には自ら日本地震学会を組織して、地震の観測と研究を精力的に行うかたわら、関谷清景、大森房吉などの日本人地震学者を育成した。また、濃尾地震(明治24年)の被害調査の実施や建造物の耐震化の提案など、防災面にも業績を残している。精密な観測を行うために地震計の開発にも努め、滞日中に、東京大学理学部教授ユーイング(J.A.Ewing)らと協力して数種類の地震計を考案した。
 本機は、地震動のうち水平動を記録するもので、主に観測地から遠隔の地震を検知することを目的としていた。ミルンはこの型の地震計を英国のマンロー(Munro)社に多数製作させて、世界各地に配置し、広域的な地震観測網の構築を図った。本機の銘板には「No.8」の番号が付されており、政府が設立した地震学研究組織である震災予防調査会が、明治32年に本郷の東京帝国大学構内に設置したものである。
 その機構は、地震動による振子の動きをアルミニウム管の梃子によって増幅し、先端の針の動きを記録紙(ロール状の印画紙)に石油ランプを光源として光学的に記録する。記録紙はゼンマイによって定速で回転し、正確な時計によって制御された別の針が、1時間ごとに記録紙上を通過して、時刻を記録する。振子や梃子は無用の揺動を避けるため木製の覆いをかけるようになっている。ランプの火屋、アルミニウム管の一部、重錘は後補である。感度はすぐれていたが、記録紙の速度が遅く、地震記録の詳細な分析が困難という欠点があり、しだいに新式の地震計に席を譲った。
 附とした地震記録は、この地震計による観測結果を記録したロール紙で、明治33年から38年にわたるものが現存している。巻頭に記録開始時刻を記し、地震動が記録された箇所にはペン書きで注記を付す。収納箱には震災予防調査会の焼印があり、伝来を明らかにしている。当時の地震観測の実態を示す資料として、あわせて保存を図るものである。
 本機は、日本国内に現存する最古の地震計であり、その伝来も明らかで、初めて科学的な観測を行い、日本人の地震学者養成に貢献したことから、わが国地震学研究の発達を語るうえで貴重な資料である。

関連作品

チェックした関連作品の検索