樹下黎明
じゅかれいめい
概要
長きにわたる苦行生活を経てもなお悟りの境地にいたらない釈迦は、菩提樹の下に結跏趺坐し、心をしずめて瞑想を始めます。その行いを妨げようと、悪魔たちが釈迦を誘惑。しかしそれらも退け、ついに悟りを開きました。薄く目を開けて背筋をのばし、正面を見据えるその姿は、悟りを開いたまさにその瞬間なのでしょう。作者は、釈迦を題材とした作品を多年にわたって描き続けましたが、本作品はその初期の作例です。その後、研ぎ澄まされた線描と淡い色感表現による作風へと展開し、広く宗教的なテーマを深化させていきました。
作者の山中雪人は広島市生まれ。昭和13(1938)年 東京美術学校に入学。同22(1947)年より教職に就き創作活動を展開。同31(1956)年の第41回院展に《海光》が初入選します。同59(1984)年の第69回院展に《雲岡石仏》、翌第70回院展に《仏陀伝想》、翌第71回院展に《雲岡仏》を発表し、いずれも日本美術院賞・大観賞を受賞。同61(1986)年 日本美術院の同人に推挙されました。