黒漆花鳥文螺鈿琵琶 銘「孝鳥絃」
(附)黒漆内箱・白木外箱
くろうるしかちょうもんらでんびわめいこうちょうげんつけたりくろうるししらき
作品概要
本品は、中国の明時代に制作された螺鈿琵琶であり、来歴も明確である、佐賀県の文化財としてはもとより、東洋楽器楽・東洋漆工芸史及び近世初期における日中交渉史の資料として極めて貴重である。
また、黒漆内箱及び白木外箱についても、本品が大財聖林の宝物として「孝鳥絃」と称されていたことを示すものであることから、本品と一体のものとして保護を図る必要があり、附指定とする。
(1)武富家及び財団法人鍋島報效会が所蔵する「武富家伝記」等によれば、本品に関して次のことが確認できる。
ア 白山町武富家は永禄期(1558~70)に南京から渡日した「十三官(什三官)」という少年を始祖とする商家で、白山武富家・勢屯武富家・大財武富家の3家に分かれ、大財武富家からは大財聖堂を建立した武富廉斎(咸亮(しげすけ))、白山武富家からは弘道館教授を務めた武富圯南(いなん)(1808~75)など著名な儒学者を輩出している。
イ 本品は、大財武富家初代武富常古あるいは2代武富廉斎が、長崎で清国商人から購入し家蔵としたもので、琵琶の名手でもあったその子武富廉斎が使用したものである。
ウ 「武富家伝記」によれば、武富廉斎が、京都遊学中に後水尾(ごみずのお)帝(1596~1680)の前で弾奏し、「孝鳥絃」の名を下賜されたものとされている。
(2) 九州国立博物館の協力を受けて平成24年11月7日に実施したCTスキャン調査では、次のことが判明した。
ア 本品は、表板・背板ともに広葉樹で、それぞれ約0.5㎝、約1.0㎝の薄い一材で精巧に作られている。背板の中程に表板に接しない形で横木を…