日高河清姫図

日本画 

村上華岳 (1888-1939)
ムラカミ、カガク
大正8年/1919
彩色・絹本・軸・1幅
142.5×55.7
右上に落款、印章
2回国画創作協会展(「日高川」) 東京、日本橋白木屋 1919

7
日高河清姫図
Kiyohime at the Hidaka River
1919年
絹本彩色・軸 143.0×55.3cm
道成寺縁起伝説として有名であり、能にも戯曲にもなった安珍と清姫の物語に題材をとっている。しかし、この華岳の清姫は蛇身となっていとしい男を焼き殺す、激情に翻弄される女からはほど遠い。雨雲が低く垂れ込めた空の下、ほとんど画面全体を黄土一色の山肌がおおい、左下にわずかにそれとわかるほどに川の流れを示した構図に、寂しく立つ1本の松、清姫のかぶった笠、傍らに打ち捨てられた杖など道具立てもそろった中に立つ清姫が漂わせるのは、むしろ人間の悲しみにも似て切ない思いである。ようよう日高川の畔にたどりつき、小袖の上着を開けてあたかも安珍を呼びもどすかのように、軽く右手を上げたその無駄な動きを常いた簡潔なしぐさは、能や文楽のそれを思わせるし、胡粉を刷(は)いて目を閉じた表情は、本来無表情ながら場面場面によってさまざまな表情を示す能面にも近い。おそらく華岳はこの伝説の中に、ときとしてそうした、おどろおどろしいまでの愛情にも狂わざるを得ない、それによってしか救われることのない、切なく悲しいまでの人問の本性そのものを見つめていたのではなかろうか。この清姫は華岳にとって、まさにそうした「人間」そのものの象徴であり、そうした「不可思議な人間の戯曲」の主人公そのものであったに違いない。《夜桜図》や《舞妓》の系列に属する作品であるが、その中でも完成された屈指の傑作であろう。第2回国画創作協会展に出品された。

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