勝木平造製イ方御物天平筆
かつきへいぞうせいほうぎょぶつてんぴょうひつ
概要
日本近代を代表する筆匠、二代勝木平造が正倉院に伝存する「天平筆」を模したもの。二代平造、本名理三郎は嘉永六年(一八五三)に生まれ、父、初代平造に製筆を学んだ。 二十代の平造は、日本画家、川辺御楯との親しい交流の中で研鑽を深め、明治一〇年(一八七七)の第一回内国勧業博覧会では蒔絵筆を出品して鳳紋賞牌を得ている。この四年後、町田久成らの正倉院宝物調査での毛筆復元にかかわり、その模造品四本を製したという。この四本の筆は明治一四年(一八八一)の第二回内国勧業博覧会に出品され、有功二等賞を受賞した。このうちの二本は、宮内省買上となり、残りの二本はこの博覧会の審査員も務めていた、当時の筆業界の大立者、高木寿穎が購入したという。本筆はそのうちの一本に該当するものと思われ、明治の名工による最高傑作として極めて貴重である。