染田天神講連歌関係資料
そめだてんじんこうれんがかんけいしりょう
概要
本資料は、宇陀市室生染田の春日神社境内に所在する染田天神講連歌堂に伝来した、南北朝時代から安土桃山時代にかけての連歌関係資料である。本資料は、連歌類、文書・記録類、天神名号、机、唐櫃、計122点から構成される。
連歌類の大半を占める連歌次第は、発句・脇句の2句、あるいは発句から第三句までの3句を抄記する三つ物が主で、応永16年(1409)の「千句発句・脇次第」を最古のものとして、16世紀半ばまで連綿と伝存する。
文書類は、主として天神講および連歌会の財源となった田地等の売却・寄進に関する証文類で、暦応3年(1340)の「教円等田地売券」が古く、16世紀前半にかけての文書が残る。記録類は外題を「大和国東山内染田天神縁起」とする一冊で、在地の連歌の規式としては最古のものと位置づけられる。永享6年(1434)成立の「条々」をはじめ、天神講連歌の由緒や運営の在り方を知る上での基本資料として重要である。
天神名号は、菅原道真の神号「大政威徳天満大自在天神」に「南無」を冠し、黄染の平絹に墨書したものである。
机は、連歌会開催の際、名号をかけた祭壇前に置かれ、神前具を供えた前机である。
唐櫃は、本資料群を一括収納してきた大形の六脚唐櫃で、天神名号ほかの道具類を懸子に収めて上段とし、下段に机を収め、制作時期は机とともに室町時代前期にまで遡りうる。
本件は中世後期における天神講の連歌興行の内容や運営状況等を明らかにし、同時代に盛行した連歌の地方への展開を知りうる質量ともに充実した資料群として学術的価値が高い。