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長久保赤水関係資料

ながくぼせきすいかんけいしりょう

概要

長久保赤水関係資料

ながくぼせきすいかんけいしりょう

歴史資料/書跡・典籍/古文書 / 江戸 / 関東 / 茨城県

茨城県

江戸

地図・絵図類84点,文書・記録類279点,典籍類274点,書画・器物類56点

茨城県高萩市高萩8-1

重文指定年月日:20200930
国宝指定年月日:
登録年月日:

高萩市

国宝・重要文化財(美術品)

長久保赤水(一七一七~一八〇一)は、水戸藩の学者で、水戸徳川家六代治保(はるもり)の侍講をつとめ、『大日本史』地理志を執筆したほか、日本図、中国図、世界図の出版を行った。とくに『改(かい)正(せい)日(に)本(ほん)輿(よ)地(ち)路(ろ)程(てい)全(ぜん)図(ず)』(通称赤水図、安永九年(一七八〇)初版、寛政三年(一七九一)再版)は、種々の文献を博捜することにより、当時において格段に正確な地形と、豊富な地名・路程を記載した地図で、赤水没後にも版を重ね、江戸時代中後期において最も社会に普及した日本地図として著名である。経緯度をあらわした方格線を記入して出版された地図としても注目される。また、中国の歴史地図を時代順に一一枚連ねた『唐土(とうど)歴(れき)代(だい)州(しゆう)郡(ぐん)沿(えん)革(かく)地(ち)図(ず)』は、我が国で初めての中国歴史地図帳といえるもので、こちらも人気を博し、版を重ねた。
 本資料群は、赤水の子孫にあたる複数の家に伝来した赤水手沢の一括資料である。
 地図・絵図類は、日本図・中国図を中心とし、出版した地図の草稿類と、地理・歴史情報収集のために参考とした地図に大別される。草稿類では、明和五年(一七六八)の赤水の識語をもつ「改(かい)製(せい)日(に)本(ほん)分(ぶん)里(り)図(ず)」が最も注目される。本図は、訂正の貼紙が無数に貼付され、『改正日本輿地路程全図』の校正原図と位置づけられる。
 文書・記録類は、著述稿本類や覚書類、書状類、文書類、漢詩文に大別される。著述稿本類や覚書類では、一部のみになるものの『大日本史』地理志の草稿や、地図制作のための地名や距離の書付、典籍からの抄出書などがある。書状類は、赤水書状と赤水宛書状である。前者は、子息に対し、郷士としての矜持や、奉公・勤勉・読書などの意義を教諭する内容が多いことが特徴である。後者は、史館総裁立(たち)原(はら)翠(すい)軒(けん)や史館員藤田幽(ゆう)谷(こく)をはじめとする水戸藩士や、木村蒹葭(けんか)堂等諸国の文人からのものが残り、典籍や地図について情報交換を行っている様子を窺うことができる。
 典籍類は、漢籍、和書から構成される。史書、地誌が多く、詩書や韻書、天文書も含まれる。赤水の注記、訓点が付され、修学の跡を伝えるものが多い。
 これらは、赤水が出版した地図の制作過程を明らかにするだけでなく、赤水の学問の内容、交友関係、生涯の事績を考えるうえで最もまとまった資料群であり、江戸時代中後期の文化史、地図史等の研究上に価値が高い。

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