蒔絵南蛮人洋犬文硯箱
まきえなんばんじんようけんもんすずりばこ
概要
蒔絵南蛮人洋犬文硯箱
まきえなんばんじんようけんもんすずりばこ
桃山時代~江戸時代初期/16世紀後期~17世紀初期
木、漆
高4.3 縦22.0 横20.8
1合
池長孟コレクション
来歴:永見徳太郎→1931池長孟→1951市立神戸美術館→1965市立南蛮美術館→1982神戸市立博物館
参考文献:
・神戸市立博物館編『南蛮美術セレクション』(神戸市体育協会 1998)
・神戸市立博物館特別展『コレクションの精華』図録(2008)
・神戸市立博物館『まじわる文化 つなぐ歴史 むすぶ美―神戸市立博物館名品撰―』図録(2019)
・勝盛典子「南蛮人洋犬蒔絵硯箱の保存修復」(『神戸市立博物館研究紀要』第29号、2013)
面取りした蓋の表に梨地を背景に、南蛮人と洋犬を薄肉金蒔絵と銀薄板で施した硯箱。南蛮人は、ポルトガル人の従者と推定されます。服装に着目すると首元にはラッフル(ruffle)と呼ばれる襞のついた襟がみられ、洋袴にはふっくらとした特異な形態のトランクフォーゼをまとっています。腰には細長い剣も確認できます。洋犬は人物に視線を向けるように上方を向いており、その眼には貝片が嵌め込まれています。箱のなかには、硯が欠失していますが、朝顔文を施した懸子(かけご)、茄子形の水滴が収められています。
南蛮人の意匠は、南蛮屏風に描かれる人物を参考にしたことが示唆されています。16世紀以降、西洋との交流のなかで、海外向けの輸出品が製作されていますが、本作のような南蛮人を意匠にとる漆器は国内向けの調度品と考えられています。当時の日本の人々の「異国」へのまなざしがうかがえる作例です。
【近世・近代の漆工・陶磁器・染織】【南蛮美術】