色絵花鳥文銚子
いろえかちょうもんちょうし
概要
茶の湯で、客を招いて抹茶でもてなす集まりのことを茶会といいます。正式な茶会では抹茶を飲む席の前に懐石(かいせき)と呼ばれる料理を振る舞います。銚子(ちょうし)は、その際にお酒を入れるために使われました。もとは漆や金属製で、この作品のように磁器で作られた例は多くありません。
まずは、鮮やかな色にご注目ください。青、緑、黄、紫、赤。持ち手の青と注ぎ口の青は色味が違いますね。持ち手の淡い青の模様は染付(そめつけ)で、器に呉須(ごす)という青いコバルトの顔料を用いて描き、それから透明な釉薬(うわぐすり)をかけています。日本で磁器が作られ始めた17世紀初めには、このような染付の技法が中心でした。これに対して注ぎ口の青い模様は、透明な釉薬をかけて窯で焼いた後に色絵具で絵付けをしたもので、より鮮やかで艶があります。この技法を色絵(いろえ)といい、17世紀の中頃からつくられるようになりました。
また、さまざまな模様も見どころです。唐草や七宝模様などの幾何学模様と、梅や鳥などの絵が組み合わされています。よく見ると、緑の地模様にも沢山の花が描かれ、所狭しと空間を埋め尽くしていますが、一部に地の白色も印象的に残されています。
裏返してみると、底にも青い絵の具で模様が描かれています。実はこれは、窯で焼いた時にできたであろうヒビ割れを隠すためのもの。緻密に色や模様を配置する一方で、偶然できたヒビさえも模様として取りこむ作者の機転も、この作品の魅力の一つかもしれません。