振袖 白綸子地大菊小花模様
ふりそで しろりんずじおおぎくこばなもよう
概要
肩に大きく菊の花の模様をあらわした振袖です。今の振袖に比べると袖が長くない気もしますが、江戸時代前期の振袖は、このくらいの長さでした。袖の、上から3分の2くらいのところに、花や葉のもようが横切っているのがわかるでしょうか。ここを境に、下の3分の1は別の生地で継ぎ足されています。もともとは振袖ではなかったものを、未婚の女性が着られるように仕立て直したものでしょうか。
肩の菊の花びらは、刺繍と鹿の子絞りで交互にあらわされています。黒地の部分には、赤や白の小花模様と、放射状の模様が刺繍されていますね。この模様は、唐松(からまつ)の松葉をあらわしたもの。放射状にひろがるのが松葉、真ん中の3つの丸いものがしべでしょうか。
このように右半身に弧を描くように模様を表す躍動的なデザインは、寛文期(かんぶんき)を中心に町民の女性の間で流行したことから、「寛文小袖(かんぶんこそで)」と呼ばれています。このころ、それまでファッションをリードしてきた武家文化にかわり、町人が経済力をもち、ファッションに町人の好みが現れるようになりました。その結果、このような大胆なデザインの流行が生まれたのです。