十二神将立像(巳神)
じゅうにしんしょうりゅうぞう ししん
概要
十二神将(じゅうにしんしょう) は、薬師如来(やくしにょらい)という仏が従える、12人の武装した守護神、いわばガードマン集団です。この像は十二神像のうち巳神(ししん)。十二支(じゅうにし)の中の「蛇 へび」を意味します。
ヒノキの木から彫り出し、全体に色を付けたた像です。よろいを身に着けた武将の姿で、肩をいからせ、目を見開き斜め下をぐっと見据えています。ひねった体、ひじを曲げて構えた左右の腕、外側に向けて踏み出した右足から、全身に込められた力や、筋肉の緊張が伝わってきます。ざんばらと振り乱した髪の表現も印象的です。そして、なんといっても頭の上、とぐろを巻いたヘビに注目してください。
空間の奥行を感じさせる体の動き、リアルな表情、シャープで整った形は、有名な運慶に代表されるような、12世紀末期ころより起こった彫刻の表現の特徴を表しており、新しい時代のおとずれを告げています。ダイナミックな動きとともに、鮮やかに残る彩色も大きな見どころです。
もともとセットであった12の神将像は、すべて今も残っており、それぞれの頭には、おなじように、十二支(じゅうにし)の動物が表されています。東京国立博物館は12体のうち5体を所蔵します。12という数字は、薬師如来が人々を救うために立てた12の誓いに対応したものです。また東アジア地域では、古くから時間や方角を12に区分し、それぞれに12種類の動物を当てはめる風習がありました。現代に生きる私たちにも、十二支(じゅうにし)はなじみぶかいものでしょう。この十二支が薬師如来のガードマンたちにも割り振られました。いつでもどの方向にも、彼らが目を光らせているのです。