灰釉水注 瀬戸
カイユウスイチュウ セト
概要
口頸部をやや長めにした梅瓶形の瓶に、口縁部から肩に把手をつけ、短い注口をつけた典型的な古瀬戸の水注である。瀬戸地方では13世紀以降、猿投古窯以来の灰釉陶器の技法を継承し、中国陶磁の倣製作品が数多く作られた。梅瓶形の瓶子、酒会壺風な広口短頸壺や水注、合子、香炉、花瓶などがその例である。水注も胴の張った中国陶磁に手本を求め、灰釉や褐釉をほどこしたものが13~14世紀盛んに製作された。この水注はこれらの作品とはやや趣を異にし、梅瓶に近い器胎をそなえている。胴には数条の刻線を施し、他は素文で、全体に美しい朽葉色の古瀬戸釉を施している。比較的遺例のとぼしい作品で、裏面は釉薬が欠落している。