木造愛染明王坐像
モクゾウアイゼンミョウオウザゾウ
概要
愛染明王は愛欲を悟りの心へと変える明王で、身体は愛欲を表わす赤い色をして頭には獅子冠をかぶり、三目六臂に作られることが多い。密教が鎮護国家から個人的なものへと性格を変えていく平安時代後期に、朝廷や貴族たちのあいだで愛染明王への信仰は高まり、とくに十一世紀末からの院政期以降に流行した。ただし、平安時代の愛染明王の造像例は記録上多くみられるものの、現存する作品は少ない。本像は、怒りの表情を表わしながらも穏やかな作風を示すことから十二世紀後半の製作とみられ、平安時代末期までさかのぼる貴重な遺例のひとつである。