天神飛梅図
てんじんとびうめず
概要
黒い束帯を着て太刀を帯び、笏をとって振り返る立ち姿の貴人を描く。上方に一枝の梅花が宙を舞うように描かれることから、本図は、左遷された菅原道真(845-903)を慕う紅梅が一夜にして大宰府に降り立ったエピソードを表わすと思われる。その像容は、神奈川・荏柄天神社本などの古い立像の束帯天神像を参照しつつ、背景を省略して新たに首を振るしぐさや空を飛ぶ梅を加えたものと考えられ、天神画像の歴史のなかでも類例のない明確な特徴をもつ。そのユニークな天神像を作り上げた作者は、肥前出身の狩野派の絵師で、奇想の画家としても評価の高い山雪(1590-1651)である。