煙火
概要
福岡県久留米の浄土宗寺院の長男として生まれた古賀春江は、中学校を退学し上京、二科展で受賞して注目され、前衛団体「アクション」にも参加。キュビスム的な作風からパウル・クレーを思わせる童画風の絵、さらにモダンなイメージを扱ったシュルレアリスム的絵画へと前衛的な作風を展開した。
本作とほぼ同寸法、同題の油彩を公益財団法人川端康成記念会が所蔵する。後のノーベル賞作家、川端康成との親しい交友のなかで古賀が川端に贈った作品で、画家の代表作とも見なされている。
本作は、川端旧蔵品に見られる人物像を欠くが、全体のくすんだ色の調子、光る花火の表現、船や建物や植物らしきモチーフ、それらが浮遊するかのような描法など共通点が多い。川端旧蔵のほうに画家が付した解題詩には「境界もない真つ黒い夜の空間に / パツと咲く花火」「煙火は万物を蘇らせる」とあり、花火の光を受けて様々なものが瞬時に彷彿とするさまが意図されているかも知れない。