和歌浦蒔絵見台
わかのうらまきえけんだい
概要
和歌浦蒔絵見台
わかのうらまきえけんだい
石川県
江戸時代
書見板、支柱、基台からなる組立式の見台である。総体を黒漆塗りとし、書見板の表、支柱、基台には、肉合研出蒔絵・金銀平蒔絵・蒔暈・付描・銀金貝・金銀切金などの技法を用いて、雲間に三日月、その下を群れ飛ぶ鶴、潮満ちて波打ち寄せる蘆辺、そこに遊ぶ水鳥、舟を浮かべて網を打ち、釣り糸を垂れる漁師などが細密に描かれている。書見板の裏と基台の底には梨子地を施し、書見板の四隅や支柱の天地に配された銀製金具には、魚々子地に唐草文を刻む。
総高50.0 書見板縦26.0 同横37.5(㎝)
1基
石川県立美術館 石川県金沢市出羽町2-1
重文指定年月日:19980630
国宝指定年月日:
登録年月日:
石川県
国宝・重要文化財(美術品)
書見板表、支柱、基台の意匠は『万葉集』の「和歌浦に汐みちくれはかたをなみきし邊をさして田鶴【たづ】啼きわたる」(山部赤人)の歌意にちなむもので、古来景勝地として知られる和歌浦の情景を表しているとされる。こうした意匠は中世に流行した歌絵意匠の系譜に位置づけられるもので、全体を巧みに統一した繊細巧緻な意匠が、江戸時代前期の特色をよく示している。中世以来の技法をさらに発展させた、技巧的な伝統様式の蒔絵を受け継ぐ優品である。
なお、この見台は前田家旧蔵と伝えられる。加賀藩では、前田利常(一五九三-一六五八)に京都の蒔絵師・五十嵐道甫【どうほ】が招かれて以降、技巧を尽くした伝統的な蒔絵が製作された。二代五十嵐道甫とともに活躍した清水九兵衛【しみずくへい】(一六八八年没)の作と伝えられる本品は、草創期の加賀蒔絵を代表する遺例である。