舞楽螺鈿蒔絵硯箱
ぶがくらでんまきえすずりばこ
作品概要
斬新で視覚に訴える印象的意匠は、桃山から江戸時代初期にかけての、いわゆる光悦蒔絵と称される一群のものに近い。しかし、その多彩で技巧的な加飾材の使用技法は、中世以来の技法をさらに発達させた江戸時代初期の伝統的蒔絵に見られるところであり、二様式を併有したものといえる。
個性的意匠表現とともに、精緻な技巧を尽くした蒔絵であり、多様な発展を見た近世初期蒔絵の中でも、特に異彩を放つ硯箱として貴重である。
なお、本硯箱は、重文・子日蒔絵棚(文化庁)、重文・扇面鳥兜螺鈿蒔絵料紙箱(滴翠美術館)とともに、旧大名蜂須賀家に伝来したものであるが、これら三者は、細部の技法にいささかの差違が認められるものの、極めて相似た意匠感覚・技法を示している。