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鼠志野亀甲文茶碗(山端)

ねずみしのきっこうもんちゃわん(やまのは)

概要

鼠志野亀甲文茶碗(山端)

ねずみしのきっこうもんちゃわん(やまのは)

工芸品 / 安土・桃山 / 関東 / 東京都

東京都

桃山/1501-1600

鼠志野の茶碗である。素地は黄白色陶胎で、轆轤で挽いた後に作為的に歪ませ篦で削って成形し、やや小振りの高台から高い腰にかけて直線的に開き、腰には稜を立て、胴はわずかに内にすぼまりつつ立ち上がる。口辺には山道状にゆったりとした起伏をもたせ、胴の中ほどには篦彫りで一条の凸帯を削り出し、腰の一方にも篦彫りで一条の凹線を廻らす。腰から裾には大きく面取り風に丁寧な篦削りを、胴部全体には大きく篦削りをそれぞれ施し、口縁は端部を丸く仕上げる。胴の内面も篦撫でにより轆轤目を消して仕上げる。内面底部は中央に向かって緩やかにくぼむが、いわゆる茶溜まりは作り出さない。底には小さく、やや不整形な円形に高台を削り出し、高台内に「井」状の窯印を篦彫りする。
 器面全体に鬼板を化粧掛けし、胴部の三方には亀甲文と檜垣文を彫り表すが、一方を空白とする。また内面底部の二方にはそれぞれ檜垣文と草文を彫り表す。高台を除き全体に長石釉を掛ける。釉調はやわらかで、淡い鼠色に発色する。

高8.2 口径13.3 高台径6.1(㎝)

1口

東京都港区南青山6-5-1

重文指定年月日:20020626
国宝指定年月日:
登録年月日:

公益財団法人根津美術館

国宝・重要文化財(美術品)

本茶碗は轆轤で挽いた後に作為的に歪ませ篦で削って成形し、桃山時代の茶陶ならではの量感あふれる形姿を見せる。胴の亀甲文はくっきりと描き出され、それに続く檜垣文は細く太く巧みな変化を見せ、内面底部の文様も、檜垣文を太く大きく、他方の草文は細く小さく対照的にほどよく描かれる。鬼板下地が薄いためか鼠色の色調がやや淡いものとなるが、鼠志野ならではの微妙な色合いを醸し出し見事な釉景色を作り出す。なお「山端」の銘は、淡い鼠色を呈する釉調と山道状の口造りからの命名とみられる。
 本作品は、創意あふれた形姿に、亀甲文や檜垣文が見事に調和し、既指定の重要文化財・鼠志野亀甲文茶碗(峰紅葉)(五島美術館蔵)とともに鼠志野茶碗の双璧とされる。「峰紅葉」が力強い豪放な作行を示すのに対し、本茶碗は優美で温雅な作行をなし、鼠志野茶碗の代表作として価値が高い。

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