鼠志野亀甲文茶碗(山端)
ねずみしのきっこうもんちゃわん(やまのは)
作品概要
本茶碗は轆轤で挽いた後に作為的に歪ませ篦で削って成形し、桃山時代の茶陶ならではの量感あふれる形姿を見せる。胴の亀甲文はくっきりと描き出され、それに続く檜垣文は細く太く巧みな変化を見せ、内面底部の文様も、檜垣文を太く大きく、他方の草文は細く小さく対照的にほどよく描かれる。鬼板下地が薄いためか鼠色の色調がやや淡いものとなるが、鼠志野ならではの微妙な色合いを醸し出し見事な釉景色を作り出す。なお「山端」の銘は、淡い鼠色を呈する釉調と山道状の口造りからの命名とみられる。
本作品は、創意あふれた形姿に、亀甲文や檜垣文が見事に調和し、既指定の重要文化財・鼠志野亀甲文茶碗(峰紅葉)(五島美術館蔵)とともに鼠志野茶碗の双璧とされる。「峰紅葉」が力強い豪放な作行を示すのに対し、本茶碗は優美で温雅な作行をなし、鼠志野茶碗の代表作として価値が高い。