みやこ遺跡出土木製鞍前輪
みやこいせきしゅつどもくせいくらまえわ
概要
鞍は、前輪と後輪及びこの2つを結ぶ居木で構成される。本鞍は、橘町のみやこ遺跡の井戸跡から土師器や瓦器とともに出土した前輪の部分である。現在はポリエチレングリコールによる保存処理を行い、良好な状態で保管されている。
右の爪先(先端部)と左の肩から爪先にかけての一部が欠けており、大きさは高さ(復元)約30cm、下端幅(復元)約35cm、最大の厚さ3.5cm。表面の上部は海と磯の段差が明瞭であり、爪先に近い内側に鞍通しのための2つの小孔がみられる。居木の取り付け部は、片側に長さ10.7cm、奥行き1.2cmの刳り込みがつけられ、この刳り込みの中2か所に紐通しの小孔がみられる。居木は片側に1枚で、通常よばれるところの二枚居木の鞍と考えられる。木地は裏面の木目から、屈曲した枝分かれの部分を選んで木取りしたことがうかがえる。
この鞍の特徴は、海と磯の段差が明瞭であるという中世鞍の要素をもつ一方、肩部に手がかかりやすいようにつけられる手形という段々が施されていないという古代鞍の要素も併せもっていることである。製作された年代については、一緒に出土した土器から平安時代末(12世紀後半)と考えられている。古代鞍から中世鞍への過渡的な段階の鞍として全国でも数少ない資料であり、貴重な存在である。
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