虎図
とらず
概要
二幅で一対をなす虎図。作者は、江戸後期の京都において円山四条派と双璧をなした岸派の始祖である岸駒とされる。彼は虎の頭蓋骨や四肢を入手したという逸話が残るように、特に虎図を得意とした。右幅の虎は長い首をつき出し尾を振りあげながら竹林から姿を表し、どら声をあげながら闊歩する。一方、左幅の虎は背を丸め、肩と首をすくめて固まるが、これは怯えの姿ではない。水辺の際まで進み出て、前脚二本でむっくりとした体躯をしっかりと支え、ピンと立てた両耳に神経を研ぎ澄ませている。臆病ではなく緊張と警戒の姿である。ところが二頭の視線が合っていないことから、互いの姿は見えていない事が分かる。竹林に響き渡る猛虎の野太いどら声と張りつめた緊張感だけが二幅の間をつないでいる。