鍋島色絵岩牡丹文大皿
なべしまいろえいわぼたんもんおおざら
作品概要
鍋島焼は江戸時代初期より肥前(佐賀県)の鍋島藩御用窯で焼造された磁器で、特に色絵磁器は皿類を主体にして、技術的にわが国でも最も水準の高いものが製作された。その最盛期は藩窯が大川内山に移転して間もない貞享から元禄期頃と考えられ、作行きの優れたものが造られている。
本品は見込がやや深く、腰から口縁にかけて張りのある曲線を描いて立ち上がり、高台が高めでわずかに裾窄まりになった、いわゆる木盃形【もくはいかた】の尺皿である。文様は見込にほどよく余白を残して鉢植えの図を表わす。図は稜花をかたどった深鉢に石を据え、紅白の花を咲かせる牡丹とその背後に薔薇の木を描いている。裏模様は染付の薔薇折枝文を三方に配し、高台には濃淡の染付による七宝繋文を廻らせている。
薄手な成形、均整のとれた器形、破綻のない染付・染濃【そめだ】みの技法などに優れた技巧を示し、また白磁胎の地を余白として生かしながら、染付を基調とした地色に堂々と描かれた紅白の牡丹がひときは映える格調の高い作品で、鍋島最盛期の色絵尺皿を代表するものの一つである。