浅葱地入子菱花丸紋散模様厚板
あさぎじいりこびしはなまるもんちらしもようあついた
概要
水浅葱色の綾地に紅、萌黄、紫、藍、縹、茶などの色緯で5重の入子菱繋ぎに、向鶴丸紋と橘紋、そして重ねた三藤巴紋を織表す。両袖口側に幅出しのための生地継ぎがあること、意匠形式と金糸を用いない技法から、桃山時代の作と考えられている。
同時代の桃山時代の類品が東京国立博物館に2領所蔵される。「紅地入子菱丸紋散模様厚板」は奈良金春座に伝来したもので、桃山時代の装束が江戸時代に子方用に仕立替されている。紅地に様々な色緯で6重の入子菱と向鶴丸紋と沢瀉紋、五三桐紋が織表される。
一方、「紫地入子菱繋丸文散模様唐織」は引解かれていたものが、近年厚板の形状に復元されたもので、紫地に白糸で6重の入子菱が、色緯で向鶴丸紋、三葵紋、そして重ねた三藤巴紋が織表される。
これら3領に向鶴丸紋と重ねた三藤巴紋が多く見られるのは、何らかの由緒があるのであろう。
【参考文献】長崎巌「新収蔵品・水浅葱地入子菱花丸紋散模様厚板に関する調査報告」『国立能楽堂調査研究』vol.1 2007年