唐銅製建水
からかねせいけんすい
概要
宗徧好みの合子形建水。建水とは席中で茶碗をすすいだ湯水を捨てる器物。本作は底面中心に七重の刻線を施し、その下に端正な菊折枝文様を線刻であらわしている。箱書により文化5年(1808)6月に江戸の釜師名越弥五郎が制作したことがわかる。名越弥五郎は初代(家昌/?~1629)が江戸初期に京都の釜師名越家から分家して江戸名越家をおこし、以後代々弥五郎を称している。包布には所用者をしめす「菊印」の墨書があるが、所用者は不明。同じく菊印所用で同材、同模様、文化4年(1807)名越弥五郎作の棒先建水も伝わる。10代佐賀藩主鍋島直正が佐賀城下郊外に設けた別邸の神野御茶屋で用いた御道具のひとつ。