白地菊花模様袷法被
しろじきっかもようあわせはっぴ
概要
白地に3枚の葉が付いた16弁の八重菊を組合せた三葉菊紋を全体に詰めて配置し、金糸で織表した袷法被である。同じ紋が、林原美術館所蔵で岡山藩主池田家伝来の袷法被にも見られる。
この装束の桐製外箱には「秀吉公ヨリ御拝領/能装束 二領」と墨書があり、畳紙にも「秀吉公より御拝領之御品貮」と墨書がある。もちろん桃山時代まで上がるものではないが、いずれかの大名家に伝来した過程で伝承が付加されたのであろう。しかしそう思わせるそれなりの理由もありそうである。それはこの菊紋の葉と花の形が特殊なためであろう。通常の菊の葉と異なって先が丸く、桃山期の桐紋の葉に似ている。菊・桐紋を好み、全国の諸大名に菊・桐紋を下賜した太閤秀吉を想起させる。そして菊花もまた古様な桃山・江戸初期の要素を持った菊紋となっている。
ところで前記外箱には、米国空軍が輸送したことを証するラベルが貼られている。戦後、進駐軍の幹部が土産に購入して、軍用機でアメリカに持ち帰ったらしい。数奇な運命を辿った能装束である。
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国立能楽堂 資料展示室