南宮神社神像群
なんぐうじんじゃしんぞうぐん
作品概要
府中市栗柄町に所在する南宮神社には、男神坐像4躯、女神坐像4躯、童子立像1躯、童女立像1躯、男神立像1躯の計11躯の神像が伝わる。それらは本殿内に祀られる。 11躯のうち女神坐像(四号)、童子立像、童女立像の3躯は、面部や衣の表現が近似することから一具とみられ、穏やかで、起伏の少ない面部の表現から十二世紀の制作と考えられる。平安時代に制作された童女像は稀である上、童子像と対となる点も注目される。
男神坐像(一・二・三・四号像)、女神坐像(一・二・三号像)の7躯は、肉付きの良い面部表現などが共通することから、一具とみられる。男神坐像は、いずれも冠・袍・袍を着ける通例の姿であるが、目を見開き口元を引き締めて威厳のあるもの、穏やかな表情のものなど、顔立ちに違いがある。顔の皺に注目すると、三号像・四号像にはそれが無いのに対し、一号像には額、二号像は額・目尻・口元にあり、それによって青年・壮年・老年という年齢を表していると考えられる。女神坐像は、一号・二号像が宮廷女性の装束、三号像が庶民の衣を着けているが、それによって主従などの社会的地位を表現している可能性がある。また、一号像と二号像は額髪を両胸の前に垂らすのに対し、三号像は額髪を耳にかけて背に垂らしている。三号像の形状は、源氏物語の横笛などに記述される、宮廷女性としてはたしなみに欠ける「耳はさみ」を表現していると考えられる。本一具像は、装束や理髪に平安から鎌倉時代の風俗を伝える注目すべき作品であるとともに、一具内でこれほど多くの年齢や社会的地位を表現する例は他には無く、彫刻史上の意義はきわめて…