地蔵平遺跡出土石器
じぞうだいらいせきしゅつどせっき
概要
地蔵平遺跡出土石器は、ATを挟む上下の良好な複数の遺物包含層から出土したもので、ナイフ形石器文化期の複数時期の石器群がATとの関係で層位的に捉えられた例は県内で初めてである。これらのうち、主要器種であるナイフ形石器・台形石器・角錘状石器・剥片尖頭器・台形様石器は、これまで点的に把握されてきたに過ぎなかった北部九州における後期旧石器時代の石器の編年を考察する際の基準となるもので、特に重要である。
地蔵平遺跡からは、ナイフ形石器361点、台形石器及び台形様石器171点、剥片尖頭器52点、角錘状石器104点が出土している。指定する石器は、これらのうち、石器の編年に有意であると考えられる層位から出土したものの中から優品を選別したものである。
ATの降灰年代は、近年の測定に基づく年代推定値による。なお、地蔵平遺跡から検出されたAT層に含まれる炭化物については、約29,500~30,500年前の測定値が得られている。
地蔵平遺跡においては、ATの直上及び直下を含む複数の層から石器が出土しており、これらのうち、特にナイフ形石器の形状に大きな差異を認めがたい。AT降灰前後の時間の経過が短いことが推定されるとともに、少なくとも北部九州においては、AT降灰による壊滅的な被害がなかったことが推定される。