網干鷺蒔絵棚
あぼしさぎまきえたな
概要
江戸時代には茶人の好みなどを反映した様々な飾り棚が発展しました。この棚もおそらく、下段の戸の中に水指を入れて、茶席で用いられたものでしょう。
表面には黒い漆を塗って、その上に漆で図柄を描き、細かい金粉を蒔きつけ定着させて文様を表しています。この技法を「蒔絵」といいます。
棚板や戸には、水辺に鷺が舞い飛び、網を干す情景を描いています。漁業に使う網を干す様子は、その曲線が画面に作り上げるリズムが人々に好まれたらしく、安土桃山時代以降の絵画や工芸品のモチーフに、しばしば見受けられます。中でもこの棚は、棚板や支柱の直線的な構成と弧を描く網の図柄が見事に調和しています。また銀粉で表わされた鷺が、踊るように飛び交う様子も、軽快で洒落ています。
空調のない時代、人々は水辺や雪を描いた文様から涼しさを感じ取り、夏の暑さをやりすごしたといいます。