赤楽島台茶碗
あからくしまだいちゃわん
概要
客を招いて抹茶でもてなす茶会では濃茶(こいちゃ)と薄茶(うすちゃ)がふるまわれます。濃茶では、格式の高い楽茶碗を使い、その中にたっぷりの抹茶を入れて練り、客人たちをもてなします。客人は一つの茶碗を回し飲みしますが、人数が多い大寄せの茶会などでは茶碗を複数使います。茶の湯で、お茶を点(た)てることを点前(てまえ)といいますが、このように複数の茶碗を用いる際、茶碗を重ねて茶席に運び入れる、「重ね茶碗」という点前があります。
この作品は茶の湯の大切な行事の一つ、正月の茶会・初釜(はつがま)の席で使われる茶碗で、島台(しまだい)茶碗といいます。上の茶碗に金の箔を、下の茶碗に銀の箔を貼って重ねた、お正月にぴったりなおめでたい華やかな作品です。
この作品のような楽茶碗は、千利休がやきものをつくる職人だった長次郎に自身の好みの茶碗を焼かせたのが始まりです。京都で取れた柔らかい土を使い、ろくろを使わずに手とヘラで形づくります。この茶碗は長次郎から続く樂家十代、旦入(たんにゅう)の作品です。旦入はヘラを装飾的に使うことを得意としていました。この茶碗の内側、見込(みこ)みと呼ばれる部分には、旦入が入れた大胆なヘラの跡を見ることができます。