秋林隠居図
しゅうりんいんきょず
概要
王紱(おうふつ)は、字を孟端、号を友石生、九龍山人、青城山人といい、江蘇省無錫の人。折帯皴(せったいしゅん)(蕭散体【しょうさんたい】)と呼ばれる独特の渇筆(かっぴつ)を使った山水は、同郷の文人画家である倪瓚(げいさん)に学んだもので、独自の寂寞とした心象風景が描き出されています。 日本に到来した最初期の本格的文人画といってもよい高品質の作品です。清末に広東の孔広陶(こうこうとう)が収蔵し、表具もそれ以前の中国でなされたものです。その後、民国7年(1915)に呉昌碩(ごしょうせき)が跋をしたため、さらに大正6年(1917)、清朝の官僚であり京都に亡命していた羅振玉(らしんぎょく)が題を記しています。日本では実業家・政治家であった山本悌二郎(やまもとていじろう)(1870~1937)が収蔵し、『澄懐堂書画目録(ちょうかいどうしょがもくろく)』に所収されています。作家の芥川龍之介も志賀直哉も、そのコレクションに憧れた一人でした。(150519_t081)