宝相華蒔絵螺鈿卓
ホウソウゲマキエラデンジョク
概要
古代の仏具や正倉院宝物を模したような奈良地方の漆器を「奈良漆器」と呼ぶ。古くから継承されてきたやに聞こえるが、京都と違い、奈良には近世を通じて産業としての漆器製産は根付いていなかった。「奈良漆器」の発生は明治時代の博覧会ブームに起因する。その立役者が吉田立斎(一八六七~一九三五)であり、北村久斎(一八七五~一九五七)はその弟である。本名は久吉。北村は母方の姓で、久一は若い時分の雅号である。伝統的な器形、文様、技法を強く意識して制作された本品は、逆に極めて近代的な存在となっていると言える。