色絵武蔵野図茶碗
いろえむさしのずちゃわん
概要
碗形の器表一面に、満月の下で秋風にそよぐ芒を描き武蔵野の秋景をあらわしている。月は白釉で大きくあらわされ、その下で青白く輝く夜の野は銀を塗りつめている。銀はすでに酸化して灰黒色の燻銀のようになって、暗夜の野原を想わせるが、当初にあっては、華やかな雰囲気の茶碗であったことは想像に難くない。芒は赤、緑、青を用いて二叢に描かれ、背の高い芒は内側の口縁のところにその穂先をのぞかせている。
淡黄色のきめの細かい素地で成形され、高台は片薄に削られている。白釉は高台まわりを残して総体に掛けられ、細かい貫入が入る。高台内左側に「仁清」の小印が捺されている。
野々村仁清は、京焼の最盛期の陶工ともいえる。瀬戸で茶入の修行ののち、京都の仁和寺門前に御室焼を開いた。その轆轤技術の優れていることはよく知られるが、色絵の意匠においても、卓抜した力を見ることができる。
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